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「スザク、あの、今度」 もじもじとした仕草をしながら頬を染めたユーフェミアは、意を決して言葉を紡いだのだが、そこから先の言葉は、乱入者によって遮られた。 「あら、お飾りの妹と無能な弟の偽りの騎士が一緒にいるなんて、珍しいわね」 厭味ったらしい言い方と、見下した話し方。 その声を聞いた瞬間に、ユーフェミアは顔色を変えた。 声の方に振り返ると、そ個にいたのは第一皇女ギネヴィアだった。 取り巻きを大量にひきつれ、穏やかで温かかった場を一瞬で壊した。 それが解ったのか、辺りはざわめく。 「それで、貴方の役立たずな主は何処?ああ、偽りとはいえ主の場所も解らないなんて、やはり無能な人間の騎士は無能ね」 答える暇もなく、言い捨てたギネヴィアに腹は立つが、知らないのは否定のしようもない。ユーフェミアとの話は楽しく、夢中になってしまいルルーシュを目で追う事さえしていなかったのだ。 今どこにいるかなど解らない。 何をしているんだ僕は、いくら彼女との会話が楽しくても、彼の事を失念するなんて・・・騎士失格だ。と、唇を噛んだ。 「ギネヴィアお姉さま、スザクは無能ではありません」 「なに?」 スザクが非難の言葉を浴びると、苦手な長女の姿と言葉に、気持ちが落ち込み暗い表情で俯いていたとは思えないほど凛とした声と態度でユーフェミアは言った。 お飾りの皇女、コーネリアに守られているだけの籠の鳥。ただ微笑むしか能の無いユーフェミアが自分の意思を主張してきた事に、ギネヴィアは驚き、目を眇めた。 「スザクは騎士としても、とても素晴らしい才能を持っています。ただ、今はそれを使う機会が無く、本来とは異なる評価をされているだけなのです」 ルルーシュがスザクを粗雑に扱うから、スザクはその才能を発揮できないと言う話は、以前から囁かれていた。 とはいえ、実力主義のブリタニアにおいては、結果がすべて。 結果を出せない、出す事の出来ない以上スザクは無能なのだ。 だからいくら主張しようとも、それは負け犬の遠吠え。 評価される場を作れない者には相応しい評価なのだ。 そんな事も解らないのかと、ギネヴィアと取り巻きたちは笑う。 「偽りの騎士が評価される事は一生無いのだから、今のこの評価が全てだろうに。所詮異国の人間、愚かな弟とて自分の騎士にした事を恥じているのだろう」 「・・・そんな事ありません!スザクは異国の人間ではありますが、彼を騎士として恥ずかしい事など何もありません!彼は正しい立場を得て、正しい評価をされるべき人間なのです!」 自分よりも上位の皇女相手に怒鳴るユーフェミアの姿を、誰もが見ていた。 今までこの姉妹が喧嘩をした姿など見た事はない。 いつも一方的にギネヴィアがユーフェミアを貶して終わっていたから。 今まででは考えられない事態に、皆の視線はそこに集中し、だからこそ、その後の言葉も皆が聞いていた。 「スザク!偽りの騎士の地位を捨て、私の専任騎士になりなさい!」 多くの皇族が、貴族が注目していたその中で 自分より皇位継承権の低い皇族の 異母兄の騎士に対し、ユーフェミアは凛とした表情で命令した。 |